ダチュラな私。
「今は気付いたから良かったけどさ。一人のときはもう少し周り見ろよ?」
やっと目を合わせてくれた一成は、子供に注意するようにそんなことを言う。
いつもならば言い返していたけれど、今日はその意味が身に染みてわかっていたので、素直に頷いた。
本当にもう少し、しっかりしなくちゃ。
でもなんで気付かなかったんだろう?
いつもならあんなに近付かれるまで気付かないなんて、有り得ないのに。
「まあ今日はいいけど。ほら、行くぞ」
夏だから気が緩んでいるのかな。
そんなことを考えていると私の右手に、一成は自分の左手を重ねてきた。
その行動に驚いている間もなく、一成は私の手を引いてさっさと歩いていく。
私は右手に感じる熱のおかげで全ての思考が吹っ飛んでしまい、繋がれた手を見つめることしか出来なかった。