ダチュラな私。

口を開いたままだったので海水を飲み込んでしまう。口の中が一気に塩辛くなった。

何かに掴まろうと必死で手を動かし、何とか浮き上がろうと足をバタつかせてみるけれど、全ては無意味だった。

足を付こうにも、私の身長では頭のてっぺんまで隠れてしまう。

本気で危ないかも。

そう、考えはじめたとき、私の体は誰かの腕によって掬い上げられた。


「おい、大丈夫か!?」

それが誰かなんて言うまでもなく一成で。

大きく息を吸い込みながら目が痛むのを我慢して開けてみると、視界いっぱいに一成の顔が映り込んできた。


片手で私を抱き上げる一成のもう片方の手には、私が掴まっていた浮輪があって。

一成が悪戯で私から浮輪を取り上げたことを、理解した。


確かにこれは可愛い悪戯の部類に入るのかもしれない。だけど……

「ひどい……私、泳げないのに」

泳げない私からすれば死活問題だ。
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