ダチュラな私。

「それだけはやめてくれ」

本気で嫌そうに顔をしかめる一成。

一成は聖羅のことが苦手……というか口で勝てない相手だからか、なるべく波風を立てたくないらしい。


だけど、それにしたって。

こんなに嫌な顔しなくてもいいのに。

私は恥ずかしい気持ちがだんだんと小さくなっていき、思わず吹き出してしまった。


私が笑っている間、一成はそっぽを向いて拗ねていたけれどそれがさらに面白い。

笑い続ける私に呆れたのかつられたのか、どちらなのかよくわからないけれど。

とうとう一成も笑い出してしまった。


それは初めて見た“本気で笑っている一成”だったけれど、残念ながら私は今、それに感動している場合ではない。

結局私達は海の中で、抱き合うような体勢のままでしばらく笑い続けていた。

強い太陽の光に曝されながら。
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