ダチュラな私。

いわゆるイケメンには爽吾君で見慣れていたはずなのに、この人はレベルが違う。

芸能人でもここまで完璧な人はなかなかいないのでは……

「なあ。なに?」

そんな私の勝手な思考はそこで打ち切られて、声の主を見るとその完璧な顔を不機嫌そうに歪めていた。


私は慌てて笑顔を作り、その人を見る。

「あ、あの。さっきの見てた?」

だけど笑顔を作り忘れていた自分に対する動揺は大きくて、言葉を噛んでしまった。

ああ、なにをやってるんだろう。

人に見惚れて笑顔を忘れてしまうなんて、私らしくない。

動揺して言葉を噛んでしまうなんて、私らしくない。

落ち着け、と笑顔の下に隠れる自分に言い聞かしてなんとか冷静になろうとする。


だけどその言葉は。

ただ私のことを見つめてくる漆黒の瞳のせいで、なんの役にも立たなかった。
< 16 / 342 >

この作品をシェア

pagetop