ダチュラな私。

聖羅の家を出るまでは普通だったはず。

家を出てからも私に送ってやると言ったのだから、不機嫌ではなかったはずだ。

ということはやっぱり、歩いている間に不機嫌になったってことかな?

それとも、ただ虫の居所が悪いとか?


「あっ、そうや。
あんな、地元の友達の話やねんけど……」

一成が不機嫌な理由について考えていると、虎の話がまた始まる。

私は一成のことが気になっていたけれど。

虎の友達の話が面白くて、考えることを放棄してしまった。


「あっ、うちここなの。
送ってくれてありがとう」

結局、一成と言葉を交わさないまま家にたどり着いてしまった。

虎とのお喋りが楽しくなければ、この時間は恐ろしく気まずいものだったろう。

お礼を言う私の頭を、気にしなくてもいい、とでも言うように撫でる虎。

不思議と虎の手に、不快感はなかった。
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