ダチュラな私。

お願いだから何も聞かないで。

私は無理矢理な笑みを作りながら、柔らかく笑う虎にそう願う。

「待たせてごめんな。
ちょっと道に迷っててん」

そんな私の願いが届いたのか、虎は照れたようにヘラリと笑った。


よかった。何も聞かれなかった。

私は安堵のため息を吐き出した。

安心すると同時に、額から汗が流れていることに気が付いた。

自分がどれほど緊張していたのかを再確認しながら、慌てて汗を拭う。

いつもはあまり気にしないけれど、ここまで暑いと化粧が崩れていないか気になった。


「よしっ!じゃあ行こか?
俺と花の初デートに!」

マスカラとか落ちてたらどうしよう。

と、ドキドキしていると、虎が大きな声でそう言った。

デート、という単語に反応した私をよそに、虎は満面の笑みだった。
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