ダチュラな私。
俯いてギュッと唇を噛む。
唇は痛むけれど、視界にあの瞳を映さないことでほんの少しだけ呼吸が楽になった。
大丈夫。私は大丈夫。
もう少しだけこうしていたら、いつもの私に戻れるはずだ。
次に顔を上げたときにはもう……
「一成(イッセイ)!なにしてんだよ!?」
なんとかやり過ごそうと考えていた私の耳に、マイク越しの爽吾君の声が響く。
それとほぼ同時に頭に軽い痛みが走る。
痛みに驚いて顔を上げると、いつの間にか立ち上がっていた男が真正面から私を見下ろしていた。
男を見上げていると、カンッとなにか固いものがテーブルにぶつかる音がした。
視線だけそちらに向けると、そこには真っ二つに割れた氷が転がっている。
それを疑問に思う間もなく、頬と首筋を何か冷たいものが伝った。