ダチュラな私。
ファッションビルを出て少し歩いたところには、飲食店が並んだ通りがある。
虎の好きな食べ物は知らないけれど、あそこまで行けばなにかあるだろう。
「おお!じゃあ行こか!」
虎はしゅんとしていた顔を一気に輝かせて、走って出入り口に向かう。
どこに飲食店があるか知らないのに、どうして迷いなく走れるんだろう。
不思議に思いながらも虎を追って、出入り口に向かおうとしたとき。
間が悪かったのか、人の波によって行く手がふさがれてしまった。
その勢いに思わず足をとめてしまう。
どこかに通れる場所はないかと人の切れ間を探してみたけれどどこにもなかった。
どうしよう。
このままでは虎とはぐれてしまう。
虎は土地勘がないし、はぐれてしまったら落ち合うことも難しいだろう。
……今日は綺麗に髪をセット出来たんだけど、仕方がないか。
しばらくその場で立ち往生していたけれど、私は意を決して人の波に飛び込んだ。