ダチュラな私。

一成は背が高いから目印になっていいな、とその背中を見つめていると。

長い足がピタリと止まる。

急に立ち止まった背中にぶつかりそうになったけれど、なんとかそれは阻止出来た。


一成は立ち止まったままキョロキョロとして、首を傾げながら振り返った。

必然的に視線が交わる私達。

「……なあ、虎は?」

どうしたのかと問い掛けようとすると、一成は首を傾げたまま私にそう尋ねてきた。


言われてみれば、ここに来るまで一番騒いでいた虎がいない。

人混みに圧倒されてすっかり忘れていたけれど、どこに行ったのだろう?

背の低い私には周りを見回しても意味がないので、人の隙間から虎らしき人物が見えないか覗いていると。


「……あっ、いた。虎ー!」

雑貨屋さんの前で女の店員さんと仲良く話している虎を発見した。
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