ダチュラな私。

私の声に気付いたらしい虎はチラッとこちらを見たあと、店員さんに右手をあげる。

じゃあな。また今度来るわ。

多分そんな会話をしているのだろう。

本当に虎はどこででも友達を作っちゃうんだな、と感心していると。

店員さんが虎に、なにか紙みたいなものを渡しているところを目撃してしまった。


……どうしよう。なんだか見てはいけないものを見てしまったような気がする。

後ろを振り返ると一成は虎を発見出来ていないらしく、視線をさ迷わせていた。

と、いうことは。
目撃してしまったのは私一人だ。

それならば見なかったフリをしようと、思っていると。


「ごめんごめん。つい夢中になってもうて」

突然、近くから聞こえた独特のイントネーションに驚いて肩が跳ね上がった。

振り向くとそこには当然、虎がいて。

虎の両手を何気なく見るとポケットにでもしまったのか、紙は握られていなかった。
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