ダチュラな私。
偶然とはいえ結果的にのぞき見してしまった私は、落ち着かなくてソワソワとしていた。
そのせいで虎のことを正面から見ることが出来なくて、足元ばかり見ていると。
「ほら、行くぞ」
後ろから、ポスッと頭を叩かれた。
振り返ると一成はさっさとエレベーターホールへと歩きはじめていて。
私は一度だけ虎に視線を向けたあと、一成のあとを追った。
エレベーターホールはかなり混雑していた。
その混雑ぶりに私はエスカレーターのほうがいいんじゃないかと言ったけれど、一成と虎はそれを頑なに拒否する。
二人のその態度は明らかにおかしくて、私は一人、首を捻ってしまった。
「付けてくれてるんや」
なんでエスカレーターは嫌なんだろう?
そう考えながらエレベーターを待っていると、いつのまにか隣に立っていた虎が私の耳に触れてきた。