ダチュラな私。
「花のために買ってんからいいに決まってるやろ。似合ってるで」
だけど虎は私の“一応”に気を悪くすることなくニカッと笑ってくれて、そう言いながら飽きもせずに私の耳に触れてくる。
私の視界には虎しか映っていないけれど、同じくエレベーターを待っている人の視線を痛いほど感じた。
私達の関係は、間違いなく誤解されているだろう。
今すぐ逃げ出したいほど恥ずかしいけれど、満足げな虎を見ているとそうすることも出来なかった。
それに私には逃げ出すより先に、虎に言わなければならないことがあった。
私は出来る限り意識を虎にだけ集中させて、周りの視線を気にしないようにする。
そして、満足げな虎を見つめながら。
「ありがとう」
はっきりと、虎にだけ聞こえるようにそう伝えた。
すると虎は笑みを深くして、耳に触れていた手で頭を優しく撫でてくれた。