ダチュラな私。

「ちょっと待ってよ。
別に逃げなくてもよくない?」

掴まれた手首を見ていると、頭の上からそんな言葉を投げられた。

顔を上げるとそこにあったのは私がぶつかった男の顔で、その顔は醜く歪んでいた。


「そうだよ。悪いと思ってんならさ、ちょっと遊ぼうよ」

とにかく掴まれている手首もその顔も気持ちが悪くて、どうしていいのかわからないでいるとそんな声が聞こえる。

なにがどうなってちょっと遊ぶことになるのか教えてほしい。

だけど、頭ではそんな強気なことを考えていても、実際にはなにも言えなくて。

体が震え出したとき。


「ん?どうしたの?怖くて話せないの?」

馬鹿にしている、子供をあやすような男の声が、私の鼓膜を揺らした。
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