ダチュラな私。

鋭い視線は睨んでいるわけではないのに、本当に恐かった。

その視線を向けられていない私でもそう感じるのだから、この男達が感じている恐怖はかなり大きいものだろう。

私は目の前にいる虎が、あの虎だとは信じられない気持ちだった。


「おい。行くぞ。腹減った」

すると空気を読んだのか読んでいないのか、一成がそんなことを言う。

虎から視線を外して一成に向けると、一成は呆れたような顔をしていたけれど。

漆黒の瞳はやっぱり、鋭いままだった。


「それもそうやな。行こか」

虎は一成にそう同意しながらも男達から視線は逸らさず、私のほうなんて見ていないはずなのに、私の手を掴んできた。

その行動の意味を考えるより先にそのまま手を引かれて、引かれるままに動くと。

私の体は虎の隣に移動していた。

驚いて虎の顔を見上げると視線は私には向いておらず、まだ男達に向けられていた。
< 226 / 342 >

この作品をシェア

pagetop