ダチュラな私。

「ありがとう。でも俺達は大丈夫だから。
ほら、バカは風邪引かないっていうし」

一瞬、とても優しい瞳で私を見つめた爽吾君は、次の瞬間にはケラケラと笑い出す。

その優しい瞳に少しだけ胸が高鳴ったけれど、それは聖羅の不機嫌な顔によってすぐに掻き消されてしまった。


「……早く帰るわよ。アンタは風邪引かなくても、私と花は風邪引いちゃうし」

私を一緒にするな、と言外に匂わす聖羅は不機嫌なまま、空を見上げる。

つられて私も空を見上げると、なんとなく雨粒が大きくなっているような気がした。


今日は雨が降るなんて天気予報では言ってなかったから、ただの夕立だと思ったけど。

よくよく考えれば夕立なら、短い時間に激しい雨を降らすだろう。


「じゃあ二人とも、風邪引かないように気をつけて帰ってね」

私はこれ以上、雨が強くならないうちに帰ってもらおうと、二人にそう言った。
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