ダチュラな私。

はあ……

私はため息をつき右手に聖羅の携帯を持ったまま、住宅街を歩く。

駅の近くまで行ったけれど、結局、二人を見付けることは出来なかった。

そんな私に追い打ちをかけるように雨足はだんだんと強くなっていく。

おかげで今の私には“濡れ鼠”という言葉がぴったりだ。


でも、ここまで濡れてしまうと人というものは開き直れるらしい。

幸いなことにお風呂に入る準備はさっきしてきたので、家に帰ればすぐに温かいお湯に浸かれるはずだ。

すぐにお風呂に入れば、風邪を引くことはないだろう。

晩御飯は……デリバリーにすればいい。

本当はあまり好きじゃないんだけど、たまにはいいだろう。


私は聖羅の携帯をデニムのスカートのポケットにしまいながら。

視界が悪い灰色に染まった住宅街を、目を細めていつもよりゆっくりと歩いた。
< 249 / 342 >

この作品をシェア

pagetop