ダチュラな私。
灰色の住宅街からは雨がなにかにぶつかり弾ける音以外、なにも聞こえなかった。
雨に掻き消されているのだとわかっていても、いつも生活音が響いている住宅街にその音がないことはやはり不気味だ。
まるで知らない土地を訪れたときのような、心細い気持ちになった。
だから自分の家が視界に入ったとき、すごくほっとしてしまった。
見るたびにいつも嫌な気分になる不法投棄の巣窟である空き地だって、今日だけは私の気分を害さない。
心細くなっていた自分に苦笑しながら、家を目指して足早に歩く。
とりあえずお風呂に入って、と頭の中でこれからの予定を考える。
そして晩御飯はピザにしようかな、と考えながら空き地の前を通り過ぎようとしたとき。
私は叫ぶ間もなく。
誰かに後ろから口を塞がれてしまった。