ダチュラな私。
口元を覆うゴツゴツとした手。
体に巻き付いた腕。
そして頭の上から響く荒い息遣い。
私の頭の中から“冷静に考える”という機能が消え去っていった。
そんな状態でも危ないということはわかるので、私は逃げようと必死に暴れる。
だけど私の体は引きずられるように、空き地の中へと連れ込まれていく。
暴れているせいで、捨てられている冷蔵庫や洗濯機に手足をぶつけた。
古いブラウン管のテレビに足が引っ掛かってサンダルが脱げた。
それでも逃げようと目茶苦茶に暴れる。
それなのに、まるで私の力なんて……女の力なんて無意味だというように。
私は空き地の一番奥のブロック塀に、口を塞がれたまま押さえ付けられた。
悔しくて、怖くて。
目の前にいる男を睨みつける。
年齢は二〇代後半くらいだろうか。
フードを被っていてよく見えないけれどその顔にはなんの特徴もなく、体型も中肉中背で平凡を絵に描いたような男だ。