ダチュラな私。

息がしにくくて苦しい。

それでも暴れていると、さきほどとは違うほうの頬をさらに強く殴られた。


「大人しくしててくれれば痛くないんだよ?今から気持ちいいことをするんだから」

私の目に映ったものは、そう楽しそうに笑う汚い男の顔と、カッターナイフだった。


死にたくない。

そう本気で思ったのは初めてだった。


動かなくなった私に満足したのか、男は私の両手を片手でまとめて頭の上で固定する。

押さえ付けられた手は、砂利が突き刺さったのか鈍く痛む。

そして男は私のTシャツの中にカッターの刃を滑りこませてきた。


刃の感触に一瞬、息がとまる。

男は私を傷付けるのではなく、Tシャツを切ろうとしているようだった。

けれど、普通のカッターで洋服が切れるわけがない。

男は舌打ちをするとカッターを投げ捨てて、切れ目が入ったTシャツを強引に破った。
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