ダチュラな私。

漆黒のその瞳に見つめられると私の中からは、目を逸らすなんて選択肢はなくなる。

しばらく視線を合わせていると一成の体から力が抜けたことが、ここからもわかった。

羽交い締めにされたまま男の上から立ち上がった一成は、虎に何か告げて。

虎はそれに応えるように、一成から腕を解いた。


よかった。そうホッとしていると、解放された一成がこちらに向かって歩いてくる。

そしてたった数歩で私の目の前までくると、突然シャツを脱ぎはじめた。


「一成……」

その行動の意味がわからなくて尋ねようとすると、それより先にシャツを投げ渡される。

なぜシャツを渡されたのかわからなくて、一成とシャツを交互に見ていると。


「それ着てろ。
濡れてるけどその格好よりはマシだろ」

一成は気まずそうに私から目を逸らし、そう言いながら私を指差した。
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