ダチュラな私。

あの男は冗談で言っているわけではない。

本気で私のことを愛していると叫び、本気で私が悪いと糾弾している。

自分が正しいと本気で思っているんだ。


そう考えると体が激しく震える。

あの男には私の常識が全く通用しない。

私が嫌だと叫んでも、嫌いだと叫んでも、あの男は都合の良いように解釈するだろう。

頭の思考回路が正常ではないんだ。


「アイツ、狂っとるわ」


頭の片隅に過ぎった言葉が、別のイントネーションで聞こえてきた。

それは私に言っているわけではなく、独り言のようなものだったけれど。

私はそれに返事をするように、Tシャツを握っている手にさらに力を込めた。


……もう嫌だ。
早く家に帰りたい。

こんな狂っている男と同じ空間にいることが、怖くてたまらなかった。
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