ダチュラな私。
「お前があいつを愛してる?
ふざけたことを吐かすなよ」
虎に帰りたいと伝えようとしたとき、一成の静かな声が聞こえた。
その声はとくに怒っているふうには、聞こえなかったけれど。
直後に響いた大きな音と、私の目に映った光景が、そうではないことを証明していた。
一成は男の体をブロック塀に押し付けて、右手は首に添えられていた。
数メートル先で行われているそれは、本当に現実味のないもので。
「一成!やめとけ!」
私は虎がそう叫ぶまで、まるで映画でも見ているような気分になっていた。
一成は虎の声なんか聞こえていないようで、添えられた手を少しずつ上に持ち上げる。
手の位置が上がるにつれて男は苦悶の表情を浮かべ、足元はつま先立ちになっていった。
そしてもうこれ以上は無理だと思ったのか、ペチペチと一成の腕を叩き始めた。