ダチュラな私。
握った拳
男を投げ捨てた一成の肩を、お疲れ様、とでも言うように虎がポンポンと叩く。
私が涙を拭いもせずにその様子を見ていると、虎の視線がこちらに向いた。
「花、嫌やと思うけどあとで警察行こ」
そう言う虎の瞳は真剣で、即座に拒否は出来なかった。
だけど警察に行けば大事になる。
家族にも知られてしまうし、近所中にも話はすぐに広まるだろう。
そうなればまた、好奇の視線に曝される。
しかも犯人はあのときと同一人物なんだ。
せっかく皆が忘れかけているのに、またあのことを掘り返されるなんて。
絶対に嫌だ。
「私……」
「大丈夫だ。守ってやる」
警察には行きたくない。
そう伝えようとしたけれど、黙っていた一成が力強い視線を私に向けてきた。