ダチュラな私。

「花、コイツを殴れ」


その意味を私は最初、理解出来なかった。

理解したあとも冗談だと思った。

でも一成は真剣な顔をしていて、それが本気だと表情で語っている。


「一成、お前正気か?今の花見たらそんなん無理やってわかるやろ?」

黙ったまま突っ立っている私の代わりに、虎が呆れたようにそう言う。

その声には少しだけ、苛立ちも含まれているように感じた。

だけど一成はそんな虎の言葉なんか聞いていないように、私を見つめる。


「一生コイツに怯えて暮らす気か?」

そして私の本心を見透かしているようなその言葉に、心臓が大きく鳴った。


確かにこのままでは一成の言う通り、この男への恐怖心は消えないだろう。

それこそ本当に、一生この男に怯えたまま暮らしていくことになるかもしれない。


……私は心を決めて。
一歩、踏み出した。
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