ダチュラな私。
正面玄関前は、人と音で溢れていた。
パジャマを着た入院患者さんに、果物を持っているお見舞いにきたらしき人。
診察待ちなのか本を読んでいる人。
子供のぐずる声やパタパタと歩く看護師さん達の足音、患者さんの名前を呼ぶ声。
病院でよく見る光景なのに日常生活と離れていた私には全てが慌ただしく映った。
そんな人達を横目にしつつ、外から見えやすい位置のベンチに座り、小さなボストンバッグを膝の上におく。
そして、数日ぶりに。
自動ドアのガラス一枚隔てた外の景色を堪能しようと、外に目を向けた。
外の世界はあの日とは打って変わって、太陽の光を浴びて輝いていた。
あの日の名残がどこにもないその世界を見ていると、あの日のことは全て悪夢だったかのように感じてしまう。
だけど、痛む足や体中に残る傷跡が、あれは現実だったと叫んでいて。
私は外の世界を眺めながらぼんやりと、あの日から今日までのことを思い返していった。