ダチュラな私。
エントランスとは違い、誰もいない階段。
とても静かなその場所では私が履いているパンプスや、聖羅の履いているサンダルの音がよく響く。
「それにしても、相変わらず人気者ね」
誰も話すことなく無言のまま階段を上っていると、聖羅がポツリとそう呟いた。
その声色は“人気者”な私を褒めているようなものではなく。
“人気者”を演じている私を責める……というか呆れているような声色で。
思わず足を止めて聖羅をチラリと見れば、カラーコンタクトによって灰色に光るその瞳には、心配の色が混じっていた。
……そっか。心配してくれたんだね。
その瞳を見て私を責めているわけでもなく呆れているわけでもないと理解した私は、数段上で立ち止まっている聖羅に軽く微笑んだ。
そんな私に聖羅は、何だか納得していないような表情をしたけれど。
しばらく私を見つめたあと、同じように軽く微笑んでくれた。