ダチュラな私。
「花!」
ふらふらと視線をさ迷わせていると、よく通る声で名前を呼ばれる。
そちらに視線を固定させると、ふわふわの金髪を揺らしながら虎が笑みを浮かべて手をふっていた。
だけどその隣には、赤茶の髪はいない。
外で待っているのかな、と思い虎が入ってきた自動ドアの外に目を向けたけれど、やっぱりどこにも一成はいなかった。
一成に待っとけって言われたんだけどな。
人と人の間を縫ってこちらへと向かってくる虎を凝視しながら、そんなことを思う。
虎はすれ違う人にニコリと会釈をして、そのたびに老若男女とわず心を奪っていく。
その様子を見ながら、どこでもカリスマ性を発揮する人だな、と感心しているうちに虎は私の目の前までやってきた。
「待たせてごめんな。
出よう思ったら、一成が急に店番になってもうてバタバタしてもうてん」
額に浮かんだ汗を拭いながら、虎は私が疑問を口にする前にそう説明してくれた。