ダチュラな私。
虎はよほど急いで来てくれたのか、手で顔を扇ぎながら熱を冷ましている。
「そうなんだ。お店忙しいの?」
そんな虎を急かさないように、ベンチに座ったままそう問い掛けた。
もしお店が忙しくて一成が店番になったのなら、虎もお店にいたほうがいいはずだ。
「ああ、忙しいわけやないで。ただおばちゃんに急用が出来てもうてな。……だいたい、そんなに忙しい店やったら一成に任せられへんやろ?」
虎は手をパタパタとさせながら、最後の部分は意地悪く口角をあげていた。
確かに、一成に忙しい店を任せる勇気ある経営者はいないだろう。
あの無愛想な顔でお客さんを怯ませる様子が、簡単に想像出来きた。
「じゃあいこか?」
その光景を想像して笑っていると、虎が私の顔を無邪気な瞳で覗き込んでくる。
約二〇センチのその距離に少し緊張したけれど、私は小さく頷いた。