ダチュラな私。

ポケットから携帯を取り出し、ディスプレイも見ないで電話に出る。

「退院おめでとー!」

すると私が声を発するより先に、電話口から大きな声が二つ聞こえてきた。

それは言うまでもなく聖羅と爽吾君で、二人の声は静かなリビングにも響き渡った。


「あ、ありが、とう」

ほとんどの脳の機能を考えることに使っていた私は、そんなとぎれとぎれのお礼しか言えなかった。

でも二人の声を聞いて、私はなんだかホッとしていた。

よくよく考えれば今日退院してきて、ついさっき告白されて。

非日常的なことの連続で、私の神経はかなり擦り減らされているのかもしれない。


「どうかしたの?体調悪い?」

そんな私の状態を正確に読みとってくれたのか、さきほどより随分押さえられた聖羅の声が私の鼓膜を揺らす。

私は心地好いその声になんと返せばいいのかわからなくて、黙り込んでしまった。
< 297 / 342 >

この作品をシェア

pagetop