ダチュラな私。

うん。大丈夫。

そう思って鏡をカバンの中にしまうとほぼ同時に、公園の外に金色の髪が見えた。

手をふると私に気が付いたのか、スタスタと公園の中へと入ってくる。

私に微笑みながらもちらちらと子供達を見る優しい瞳に、心が揺れた。


「おはよう」

一緒に遊びたいんだろうな、と思いながら目の前まできた虎にそう挨拶をする。

そういえば、虎に“おはよう”と挨拶したのはこれが初めてだな。

なんて、場違いなことを考えてしまった。


「おはよーさん」

私のそんな考えに気付いていない虎は、独特のイントネーションでそう返してくる。

そのイントネーションと“おはよう”という挨拶が持つ柔らかさが、すごく合っていた。


今日の虎はジーンズに形の綺麗な黒のTシャツという、とてもシンプルな服装だ。

だけどそのシンプルな服装が、肩から下げられている真っ赤なボストンバッグを引き立てていた。
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