ダチュラな私。

目を大きく見開いたままの虎の表情からは、感情が読み取れなかった。

だけど俯くことも目を逸らすこともしないまま、虎をじっと見つめる。

視界の端には子供達が遊んでいる姿が映っているけれど、その声は聞こえない。

今、私が聞き取れる音は。
心臓の音と、虎の声だけだと思った。


「……そんな顔すんなや。
俺は花のそんな顔見たいわけちゃうから」

ぐっと感情を抑えて虎を見つめていると、優しく頭を撫でられた。

私がどんな顔をしていたのかは、知るよしもないけれど。

そう私の頭を撫でてくれた虎は、とても優しい表情をしていた。


私は流れそうになる涙を飲み込む。

そして虎の優しさを忘れないように、心に刻み込んだ。
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