ダチュラな私。
その言葉は少し投げやりで、まるで吐き捨てるようなものだったけれど。
でもだからこそ、虎の本心を語っているようだった。
「じゃあまたな」
虎は驚いている私を見て得意げに微笑みながら、くるりと回って真っ直ぐに歩いていく。
歩くたびにはねる真っ赤なボストンバッグを見て、引き止めたい衝動にかられた。
けれど虎に差し出された手をとらなかった私に、その資格はない。
滲む視界に虎が映る。
私はせめて涙がこぼれ落ちないよう堪えながら、揺れる金色を見つめ続ける。
いつか、また、再会出来ますように。
そのときはお互いに大切な友達として、再会出来ますように。
そう祈りながら、数え切れないほどの優しさと暖かさに惹かれた背中を見送った。