ダチュラな私。
その手の先を上目遣いに見ると、そこにはお母さんの優しい笑みがあった。
だけどどうすればいいのかわからなくて、動かずにいると。
「謝らなくてもいいのよ?だって一成のせいで気分が悪くなってしまったんでしょう?」
あの子がそう言ってたから、と、お母さんは困ったようにそう笑った。
確かに、あのときのことは一成のせいかと言われれば、そうなのだろうけれど。
まさかお母さんの前で、それを認めるわけにはいかない。
「いえ、あの……」
なんと言えばいいのかわからないので言葉を濁しながら話題を変えるべく、視線をキョロキョロ動かしてみる。
店先に並べられた綺麗な花。
首を傾げている天使。
薄汚れた電柱に張られた怪しいチラシ。
だけど視界に映ったものはどれも、話題にはなりそうになかった。