ダチュラな私。
真っ白になった頭ではなにも考えられなくて、ただ一成を見下ろしていると。
一成の手が私へと伸びてきた。
その手を拒むこともせずにいると、人差し指が顎に触れ、親指が唇に触れる。
意味がわからない行動だけど、私は大人しくそれを受け入れた。
「グロス」
唇に触れたまま、そう言葉を落とす一成。
漆黒の瞳に捕われながら、その言葉の意味を考えていると。
「ここだけ、グロスとれてるけど。なにか心当たりはあるか?」
一成は意地悪く口角を上げながら、唇の中央の辺りを撫でる。
その言葉と、意地悪く上がった口角と、唇を撫でる指に。
私は一成がなんであんな勘違いをして、そしてなにが言いたいのかを、やっと理解した。
戸惑いが全て表情に出ていたのだろう。
一成は私から目を逸らし、触れていた指をそっと引いた。