ダチュラな私。

視線を逸らしていた一成は、驚いたような表情で私を見上げる。

私は肩で息をしながらなんとか呼吸を整えたあと、深く息を吸い込んだ。

そして、呆然としている漆黒の瞳をしっかりと見据えた。


「確かにキスは……したよ」

された、と言うべきか少し悩んだけれど、その表現は使わなかった。

私には虎を拒む気持ちなんて、少しもなかったのだから。


「だけど、断ったの。私は……」

さきほどとは違って真っ直ぐに見つめてくる一成に、思わず言葉が詰まる。

色々と考えていたのに、いざとなるとそんな言葉はどこかへと消え去っていた。

でも、それでよかったのかも知れない。

私が一成に話したかったことは、伝えたいかったことは、とてもシンプルなこと。


「一成が好きだから!」


それだけだから。
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