ダチュラな私。
爽吾君の部屋のソファに押し倒されたことを思い出す。
それは決して良い思い出ではないけれど、今となっては悪い思い出でもない。
あれは、一つのきっかけなんだ。
「だからお前があんなふうになって本気で反省したし、話を聞いて後悔した。
俺は人の傷口を、えぐるような真似をしたんだって」
私の考えとは正反対の過去を悔いる声に、むしろ、あのことで傷付いたのは一成のほうなんだとその声を聞いて思う。
確かに私はあのとき、古傷をえぐられた。
だけどその古傷は表面上はなんともなくても、内側では化膿していたのだ。
一成は私の傷口をえぐったけれど、それと同時に溜まっていた膿を出してくれた。
それはどれだけ痛くても、私にとって必要なことだったと言える。
どんな傷でもきちんと消毒すれば元通りとまではいかなくても、瘡蓋の下からは必ず新しい皮膚がうまれるのだから。