ダチュラな私。

その声は本当に小さくて、最初、それは聞き間違いだと思った。

だけど速くなった一成の鼓動が、それが聞き間違いではないと証明している。

驚いて一成を見上げると、一成は悲しげに笑っていた。


「でも俺にそんなことを思う資格なんて、ないと思ったから」

一成がなぜそう思ったのかなんて、聞くまでもなくて。

悲しげな笑みが、そのときの一成の感情を表しているようで切なくなる。


慰めになるような気の利いたことも言えずに、ただ見つめ合っていると。

悲しげに歪んでいた表情が、なにかを決意したようなものに変わる。


「だけど虎とお前が仲良くなっていって初めて、もう止められないところまできてたんだって気付いたんだ。
……俺は花が好きだって」

漆黒の瞳に見つめられたまま、私はその真っ直ぐな言葉を受け止めた。
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