ダチュラな私。

男の視線の先を追うようにまた前を向くと、そこに居るのは聖羅で。

聖羅はというと、大きな目をこれでもかというくらいに大きく見開いている。

「なんで……って初対面の人間に水ぶっかけといて謝らないって、いったいどういう神経してんのよ!?」

そしてその華奢な体をふるふると震わせながら、私の頭越しに男を怒鳴りつけた。


そんな聖羅とは対照的に爽吾君は、ポカンとした間抜けな表情になっている。

そんな二人の表情をみて私はやっとさっきの“なんで?”が聖羅と爽吾君の“謝れ”という言葉への質問だということに気が付いた。

だけど“なんで?”の意味は理解出来ても、男のそのあまりにも非常識な質問に私は顔には出さないもののかなりムカついていた。


聖羅は今にも殴り掛かりそうな目付きで男を睨んでいる。

まさに一触即発。

そんな雰囲気の中。

私の後ろから重く、深く、心底だるそうなため息が聞こえてきた。
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