ダチュラな私。
「あのさ、俺悪いことしたとは思ってないから。だからこいつに謝る理由なんてない」
そして私が振り返る間もなく、そうはっきりと言葉にした。
爽吾君はもちろん、あんなに怒っていた聖羅までもが口を半開きにしたまま男を見つめている。
私は私でなんだかその場から動けなくて。
なんとも言えない、居心地の悪い空気が教室中に広がっていた。
そんな中、私の肩に誰かの手が触れる。
それが誰のものかなんて考えるまでもないのだろうけれど、情けないくらいに私の肩は跳ね上がってしまう。
だけど私のそんな反応に気付かなかったのか。はたまた興味がないだけなのか。
男は私の体を少し乱暴に右側に寄せて。
私の体と机の間に出来た隙間から、すっと私の前に出てきて聖羅と爽吾君の前に立った。
そして爽吾君にだけじゃあな、と声をかけたあと。男は何事もなかったかのように教室から出ていく。
私も、聖羅も、爽吾君も。
その背中を見送ることしかできなかった。