ダチュラな私。
聖羅は困ったように私と爽吾君を交互に見て、一回だけその視線をあの男に向けた。
「……ごめん」
聖羅らしくない、本当に申し訳なさそうな小さな声での謝罪の言葉。
その“ごめん”には二つの意味があるのだろうと思った。
一つはこの男が来ることを知らさず、私を呼んだことに対する“ごめん”。
もう一つは、爽吾君をどうにかすることが出来ないことに対しての“ごめん”。
私は緩く頭を横に振りながら弱々しい笑みを聖羅に向けたあと、視線を再度、柔らかそうな金色に向けた。
正直に言ってしまえば。
爽吾君に何を言われても私はあの男が大嫌いだし、許す気なんて全くない。
というよりも、これは許す許さないなどという問題ではない気がする。
許すという行為はある程度、当事者同士が信頼していて初めて成り立つ行為なのだから。
お互いに嫌い合っている私達には意味のない行為だと思う。