ダチュラな私。
「じゃあ行ってくるね。
聖羅、早くしろよ」
明るい笑顔から一転、強引に聖羅の手を引っ張る爽吾君に思わず笑ってしまう。
爽吾君は聖羅に対して悪く言えばぞんざい、良く言えばまるで家族のようなとても自然な接し方をする。
聖羅はいつもそんな爽吾君への愚痴を零しているけれど。
「もう、痛いから離してよ。
じゃあ行ってくるわね」
口で言うほどそんな関係を悪く思っていないことを、私は知っていた。
その証拠に今だって振り払おうと思えば振り払えるはずなのに、ぶつくさと文句を言いながらもその手は握られたままだ。
お互いに対してだけ素直になれない二人の重なり合った手を見ながら。
ほんの少しだけ、そんな二人の関係を羨ましく思った。
「行ってらっしゃい」
二人はその言葉に笑顔を見せてくれて。
繋いだままの手に気付いていないのか、そのまま部屋を出ていった。