ダチュラな私。

「へえ。お前、こんなことされても何も言わないんだな。慣れてるのか?」

動けない私を見下ろしながら蔑むように、そんな言葉を落としてくる男。


違う、と否定の言葉が頭に浮かぶ。

慣れていて、この状況を受け入れているから何も言わないのではなくて。

慣れていないから、どうしていいのかわからなくて何も言えないのだ。


そう言いたいのになぜか声が出なくて。

やめてと叫びたいのに声が出なくて。

どうすれば違うとわかってくれるのか、ショートした頭を必死で再起動させる。


でもどれだけ声を出そうとしても、肝心の否定の言葉は声にならなくて。

それなのにこの体勢の意味だとか、何に対して慣れてると言われたのかとか、そんな余計なことばかりを処理していく。

処理すれば処理するほど、焦ってしまって呼吸と心が乱れていき、言葉は浮かんでいるのに声にならなかった。
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