ダチュラな私。

そんな悪循環に陥っていたとき、洋服で隠されているはずの素肌に、熱を感じた。

その瞬間。

ギリギリのところで保っていた平常心はぶつりと切れ、私の目の前には……

“アイツ”がいた。


駄目だ、と思ったときにはもう手遅れで呼吸が出来なくなっていた。

だんだんと、世界が白に染まっていく。

感覚も鈍くなっていって、今どこを触られているのかわからなくなっていく。


「……おい、大丈夫か?
どうしたんだよ!?」

かろうじて働いていた私の聴覚がそんな声を拾ったけれど、すごく遠くに聞こえた。


それと同時に体を大きく揺さぶられる。

だけどその声もその手も私には“アイツ”のものとしか感じられなくて。

恐怖心と嫌悪感で、聴覚も途切れそうになったとき。


「一成?なに叫んで……花ちゃん!?」

「花!!」

そんな二つの声が耳に飛び込んできた。
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