ダチュラな私。
黒の世界
呼吸が落ち着いて目を開けると、最初に見えたものは聖羅だった。
茶色い紙袋を私の口元に当てて、左手は私の右手をぎゅっと握ってくれている。
「花?大丈夫?苦しくない?」
頷く代わりに軽く瞬きをすると、安心したように息をはいた聖羅は女神のように綺麗な微笑みを私に向けてくれた。
聖羅は本当に綺麗。
まだ酸素が行き渡っていないのか、ぼんやりとしている頭でそんなことを思う。
「花、ごめん。あのね、ちょっとだけ爽吾に代わってもいい?」
すると聖羅がとても申し訳なさそうに、小さな声で私にそう聞いてきた。
本音を言えば、今は爽吾君でも少し怖い。
いや、少しどころか……かなり怖い。
でも聖羅だってそれをわかっているから、私に聞いているのだろうし。
返事の代わりに私が握りしめていた手をゆっくりと離すと、聖羅は理解してくれたようでにこりと笑い、私の口元に当てていた紙袋を外した。