ダチュラな私。

一瞬、なにかの冗談かと思った。

だけどテーブルの前に座るこの男は、自分が間違えていないと思ったら絶対に謝らない人間だということは、このあいだ学校で会ったときに嫌というほど思い知った。

と、いうことは。この言葉は紛れも無く本心だということになる。

有り得ない展開に、私の体からはすっかり力が抜けていた。


「そう言おうと思ってお前を追い掛けたらなんかうずくまってて。
声かけようとして肩触ったらぶっ倒れたから俺の家まで連れてきた」

ばつが悪いのか、やたらと早口なその言葉。

あのとき触れた手はアイツではなくこの男だったと思うと安堵した。


「……ありがとう」

原因はこの男なのだからお礼を言うのはなんだか違う気もしたけれど。

一応、ここまで運んできてくれたらしいのでそう言っておいた。

もちろん、笑顔を向ける気にはなれなかったけれど。
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