【実話】アタシの値段~a period~
ユキのアパートに行った日から
三週間が経った。
ユキからの着信はない。
静かな部屋に響く
時計の音も
ベッドに染み付く
ユキの香りも
あの部屋の全てが
俺に、自分の弱さを突き付けるようだった。
「なぁ、この後飲みに行かねぇ?」
是非にもと引き受けた残業を片付けながら
2つ隣りのデスクで関節を伸ばす、例の同僚に話し掛けた。
「お前最近毎日じゃん。俺、もう毎日二日酔いか三日酔いか分かんね。」
怠そうに机に頬を付ける同僚に
少し悪いなと思いつつ
とっくにうんざりしていた、自分の逃げ癖を
更に情けなく思う。
「頼むよ。おごるから。」
そう言うと
「ぼく行くぅ~♪」
パッと起き上がって帰り支度を始めた。
現金な奴なわけではない。
気を使わせないための軽口なのだ。
きっと。