【実話】アタシの値段~a period~



「おう、焼肉で許してやるよ。」


そう言ってネオン街を去って行く奴を見送りながら思う。


やはり、この軽口は
気を使わせないための優しさなのだ。



「あ、おい。」


思い出したように振り返った奴が



「なぁ、さっきの電話さ、誰か別の相手からだと思ったんだろ?


もう、後悔はするなよ。」



そう言い残して、再び歩き出す後ろ姿を見ながら


アイツには本当に、
勝てる気がしない。


そう思う。



アイツの言う通り、俺はずっと


ユキからの着信を待っていた。



けれど、鳴ることのなかった着信に


もう許される日は来ないのだと思った。




< 313 / 480 >

この作品をシェア

pagetop