【実話】アタシの値段~a period~
「さすがの俺も、途方に暮れたよ。
目標を失った人間の行き着く所は
"無"だけだった。
彼女のために貯めてた金で、ずいぶん遊んだよ。
そんな時、ユキに出会ったんだ。
夜中のファミレスってのは、若い奴等が
集団で騒いでたりするだろ?
そんな中、ユキは独りでずっと窓から空を見上げてたんだ。
指し詰め、失恋でもしたんだろうと
声をかけたんだ。
持ち帰るつもりでな。
だけど、できなかったよ。
拒否するわけでもなく
受け入れるわけでもなく
喋り続ける俺を
ユキは ただずっと
無表情のままジッと見てるだけだった。
まるで人形みたいにな。」
"人形…"
そんな残酷な言い回しをしながら
浩介自身も、痛そうに眉を歪めていた。
俺と出会った時のユキも、確かに感情を失っていたように見えた。
しかし、そこまでひどくなかったように思うのは
当時のユキが
マヤを失った直後だったからなのか
その後、浩介に救われたからなのか
むしろ、両方なのだろう。