【実話】アタシの値段~a period~
「…………お前は
もう逃げるな。」
ジッと、真剣に視線をぶつけられ
その言葉はガンと俺の胸に響き
「………………はい。」
そんな返事しか返せなかった。
「それと……
お前達の出会いは
お前自身の弱さが生んだ偽りだ。
ユキは知らなくていいことだよ。
それが例え、正しいことじゃなかったとしてもな。」
「あぁ………。」
「俺もお前も、ユキには救われたんだ。
だけど、俺が望んだって
俺にアイツは救えないから
俺の分まで、ユキを頼むよ。」
"ユキを頼むよ"
ここに来るまで、俺が言うつもりで居た台詞。
「あぁ…分かった。」
まかせろ、なんて大それた事は言えなかったけれど
その日、俺は
たくさんの決意を抱えて浩介と別れた。
ロックグラスにチカチカと反射する
照明の眩しさに目をしかめながら
浩介もまた、
その曇りのない真剣なまなざしの影に
決意を秘めていたのだと
俺は知らずに居た。