【実話】アタシの値段~a period~
「ヤダッ!」
ヒトミの腕に自分の腕を絡ませて
甘えるように助けを求めるフランス人形は
やはり よく見ると
ずいぶん若い。
「いいじゃん普通にかっこ良くない?携帯くらい教えてあげたら?」
"普通にかっこ良くない?"
同僚の耳が
まるで古いアニメのように、ピクリと反応した。
「ヒトミちゃん…だっけ?」
絶対そう来ると思っていた。
「携帯教えて♪」
ニコニコと嬉しそうに。
「「誰でもいいんじゃん?信じらんな~い」」
見事にハモるヒトミとフランス人形の声。
ケラケラ笑う俺に向かって
"なんとかしてよ"
と茶色がかった大きな目が訴えかけている。
「おい、そろそろ諦めろ。」
同僚の肩に置いた手。
シュンとわざとらしく肩を項垂れられ
悪いことでもしているような気になってくる。
「いいよ、ヒトミが携帯教えてあげるよ。」
途端に、パァ~っと明るいオーラを放つ同僚は
「俺?トオル♪」
聞かれもせずに
名前を名乗っていた。